巷で“ビックデータ”が大ブームです。
IT化がすすむとともに多量のデータ蓄積が可能になりました。
そのデータの集合体を“ビッグデータ”と総称しています。
最近では、PONTAカードやSUIKAカードで得られたビッグデータを、企業が有効利用しているようですね。
“都内の30代女性は深夜帯にパスタを好む” など、地域や時間帯、性別や年齢層などでの細かな評価が可能です。
まさに革命的なデータ体系だと思います。
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話は急に飛びますが、2001の米ウォールストリート・ジャーナル紙に、
“禁煙をすすめない方が国家財政が改善する”
というビックリ仰天の発表がありました。
米たばこ最大手のフィリップ・モリス社(以下PM社)が発表したデータです。
1999年にチェコ政府よりPM社に、通達がございました。
・ 喫煙者の増加が政府の社会保険の負担増につながっているようだ
・ したがって、たばこ税をアップして喫煙者減少に努める所存である
・・・という通達でした。
そこでPM社が“ナヌ~!そんなん違うでぇ~”という反証を出したのがその仰天データです。
PM社の報告では、
☆ 喫煙者は高齢となる前に死亡する率が高い。従ってチェコでは高齢者向けの年金、医療保険、住宅の社会保障負担額が1999年に2380万ドル-3010万ドル程度軽減される
☆ たばこが原因で病気になった人や間接喫煙の被害者への医療負担、喫煙者の死亡による所得税収の減少などを差し引いても、たばこはチェコの国庫にとって1999年に1億4710万ドルの増収効果をもたらす
つまり、
“タバコで平均寿命が下がった方が、社会保障費を減らせますよ”
“タバコ税は上げないほうが、喫煙者減らないので税収も助かりますよ”
という見解だったのです。
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しかしこのデータは、チェコのみならず全世界から非難の的となりました。
まずは人道的側面での非難です。
「消費者を殺して国庫を潤すことに貢献していると自慢する会社はいかがなものか」
という指摘です。
つぎにデータの不備です。
「たばこをやめた人がそれまでにたばこ購入に充てていた収入を他商品に消費する影響を考慮していない」
という指摘です。
PM社のデータは、人間の寿命をコスト評価しております。
この論法は、タバコ会社ロビー王国の米国ですらタブー視される行為のようです。
しかも、その結果寿命が短いほうが有益という結果が出てしまった場合・・・
それは不都合な真実だったのです。
タブーのダブルパンチですね。
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医療においても、今後ビッグデータの運用が進められるそうです。
はたして、どんな結果が出るのでしょうか?
先のPM社の論法の如く、“暗黙の了解”をぶち抜いて未知の領域に踏み込んでいくのでしょうか?
いずれにしても、ビッグデータ活用が安易なプロパガンダやお決まりのミスリーディングに利用されないことを祈るばかりです。